画像は、倉敷本通り商店街の老舗喫茶ウエダのショー・ウインドウです。食品サンプルの棚に、たくさんの調度品や雑貨が置かれています。エキゾチックな風情に惹かれて、マダムに由来を訊いてみたところ、亡き夫とよく中近東を旅行し、その時に買い求めたトルコやエジプトやペルシャなどのオリエントの民芸品なのだそうです。そういえば、お店のテーブル・椅子セットも砂糖入れもなんだかアラブ風です。店内にはジャズが流れています。メディアはCDですが、録音はLPレコード時代の古いものです。夫の趣味がジャズだったのだそうで、レジ横のスペースには、夫の愛用したオープンリール・テープデッキやLPレコード・ジャケットが置いてあります。マダムは子どもの頃、ヴァイオリンを習っていて、音楽の趣味はクラシックなのだとか。けれども今でも夫の好きだったジャズをよくかけるのだそうです。店内の空間は様々な文化が積み重なって、時代の地層となってうねりながら、居心地のよい、まったりとした「ブレンドの味」を醸し出しています。

追伸
 大原美術館の基礎となる西洋美術コレクションの収集を行った児島虎次郎は、ヨーロッパに留学し、西洋絵画の研鑽を行いましたが、自らの創作のために、東洋への回帰もしていたとのことです。倉敷・酒津にあったアトリエには、オリエントの陶器が収集され、そこからインスピレーションを得ていたのが知られています。倉敷カントリークラブには、オリエントの陶器を描いた静物画「鉢と盆」が展示されています。その陶器コレクションは今、美観地区の倉敷考古館で見ることができます。ちなみに倉敷考古館の理事で芸術顧問をされているのは、児島虎次郎の孫にあたる陶芸家・児島塊太郎氏です。倉敷考古館と喫茶ウエダは空間的には近いですが、それぞれ独自にオリエントとの結びつきがあったのでした。恐るべきシンクロニシティです。
 倉敷考古館に関連して、もうひとつ拙論を述べると、巨匠・宮崎駿監督は、南米アンデス山脈の古代文明のひとつ、チムー文化の造形物にインスピレーションを受けたと妄想するのですがいかがでしょうか?チムー文化の貴重な遺産は、コレクターの稲畑太郎氏より、昭和28年(1953年)に大原總一郎に寄贈されて、今は倉敷考古学館の所蔵となり、随時展示されています。